2020年、10000m走で日本記録を更新した「ナイキシューズを使用していない」住友電工所属の田村和希(たむらかずき)選手についてお伝えします。
近年、陸上界を騒がせている「ナイキの厚底シューズ」
多くの選手が使用し日本記録を更新してきた靴として、現在試合中の使用率は、なんと80%以上!
しかし今回紹介する田村和希選手はナイキのシューズを使用していません。
「ナイキの靴を使えば10000mでも1位をとれたんじゃないの?」
そう考えたくなりますが田村和希選手には、ナイキではなくアディダスのシューズのほうが合っているのです。
一体どういう事なのか、田村和希選手の紹介と共に見ていきましょう。
田村和希にはナイキシューズが合わない?!愛用スパイクの性能とは?!
田村和希が使っているスパイクはアディダス!その性能は?
まずは、田村和希選手が、試合中に使用しているスパイクを見ていきましょう。
シューズ名は、アディゼロシリーズ、アヴァンティ 3 (ADIZERO AVANTI 3)
800mから10000mまで幅広く対応したスパイクです。
スパイクの部類では、ソール部分(靴底の白い部分)にアディダスのブーストが搭載されているおかげで、クッションがあるのが特徴となっています。
ブーストとは
精密に作られた小さな雲の上を走っているような履き心地の追求から生まれたクッション性を発揮。
温度環境による影響を受けにくいため、風や雪、太陽の日差し、雨など、あらゆる天候下で反発力を維持。
長距離のランでもEVAよりも、BOOSTフォームは劣化しにくく、性能を持続。
ナイキのシューズと比較すると、装着できるピンの数が少ない、ブーストの搭載によりクッション性能が高い、という点が挙げられます。
簡単に説明すると、田村和希選手のスパイクは、
「中長距離で、スパイクが苦手な人でもスピードが出せるような性能」
ということです。
スパイクは、マラソンシューズと違ってピンの部分で着地するので、足への負担はとても大きくなります。
しかしアディダスのスパイクは、ピンの装着数が4~5本と一般のスパイクよりもピンが2~3本少ない設計なのです。
つまり、足への負担が少ないスパイクという事になります。
もちろんピンが少ない分、スピードを出すための力が他のスパイクよりも必要になるという欠点もありますが、足への負担が少ない為、ラストスパート時の力を残しやすいというメリットもあるのです。
田村和希選手は、元々駅伝の選手で、
「アディダスのスパイクを使えば駅伝や、ロードレースと同じ感覚で走れる」
ということで使用しているのです。
第104回日本選手権、男子10000mで使用されたスパイクとは?!
10000m走での使用スパイク一覧ということで、田村和希選手のスパイクが取り上げられています。
【日本選手権2020 10000m 27分台 スパイクチャート】
非プレート内臓は田村和希のみ
NB は『FuelCell LD-X』というモデル
大迫傑は、Air zoom Victory だった
例によって間違えはご指摘下さいませ。。。。
背景画像は@ekiden_maniaさん pic.twitter.com/WHntaIFOMu
— Rolows ロローズ (@Rolows_13) December 5, 2020
こちらでは非プレート内臓は田村和希のみと書かれていますが、アディダススパイクにはナイロン製スプリントプレートが内蔵されているので、ソール(靴底)の性能面ではナイキのスパイクと大差ありません。
ナイキの「ドラゴンフライシリーズ」一強と言われている時代ですが選手の脚質、感覚を含めてシューズを選ばなければいけません。
田村和希選手の脚質に合ったシューズは、アディダスの「アディゼロシリーズ アヴァンティ 3」なのです!
これからの田村和希選手の活躍が、それを証明してくれることでしょう。
田村和希、日本選手権で10000m新記録を出すもオリンピック内定逃し涙を流す
昨年2020年、東京オリンピック内定を決める第104回日本選手権男子10000mが開催されました。
男子10000m部門で東京オリンピックに出るには、27分28秒の参加標準記録を上回なければならず、順位ももちろん大切ですが、とりあえずは、この参加標準記録を目指すレースとなります。
注目の選手は、相澤晃選手、伊藤達彦選手、そして田村和希選手の3人です。
当時の10000m日本記録は、27分29秒なので、参加標準記録を抜くには日本記録を更新しなければなりません。
そんなプレッシャーの中、10000mはスタートします。
伝説のレースとなった10000m試合内容!
最初の1000mは2分45秒で通過。
オリンピックへの出場権を手にするには、1000m2分44秒で走らなければなりません。
序盤の展開は早すぎず遅すぎずで、理想の展開と言えるでしょう。
5000m地点まで特に変化はなく、13秒41秒で通過し、2分44秒のペースをキープ出来ています。
しかし、6000m地点からレースが動きます。
先頭の日本人選手はすでにふるいにかけられ、田村和希選手、大迫傑(おおさこすぐる)選手、伊藤達彦選手、相澤晃選手の4人のみとなります。
田村和希選手が少しの間先頭に立ちますが、すぐに伊藤達彦選手が追い抜き加速、田村和希選手、大迫傑選手、相澤晃選手は追いつけず、伊藤達彦選手が単独トップに出る展開となりました。
伊藤達彦選手は、7000m地点を19分10秒で通過。
このときの1000mのタイムは2分46秒で、皆疲労と戦いつつなんとか食らいついてるという状況です。
そして、この7000mから田村和希選手が崩れ始め、先頭争いから脱落します。
本人も「足に重さを感じ始めたため伊藤達彦選手についていけなかった」と語っています。
その後相澤晃選手はペースを上げ、先頭の伊藤達彦選手を追い抜きます。
伊藤達彦選手も相澤明選手を再び追い抜き返すという粘りの走りを見せますが、9000m付近でさらに加速した相澤明選手が単独トップとなり、24分41秒で通過します。
そのまま崩れることなく1位は相澤晃選手の27分18秒75で、日本新記録と共に東京オリンピック内定を果たしたのです。
2位は伊藤達彦選手の27分25秒73、3位に27分28秒92の田村和希選手という、上位3人が日本記録を更新するという凄まじいレースになりました。
レース後の田村和希選手
残念ながら3位の田村和希選手は、参加標準記録に0.92秒届かず東京オリンピック内定を逃します。
田村和希選手はあまりの悔しさに長い時間涙を流し続け、表彰式の時もその顔に笑顔はありませんでした。
自己ベストを出したら嬉しいというのが陸上の楽しさだと思っていた。
ただ今回は違った。今まで味わったことのない感覚。もう自分はそういう位置にいるんだなって。
でもやっぱり"楽しい"って気持ちは僕の原点だから、今後も大切にしていきたいな。— 田村和希 / Tamura Kazuki (@tamukazu_ekiden) December 6, 2020
田村和希選手のインタビューより
今の感想は、純粋に「負けた」ということだけ。
レース内容が完全に力負けしていたので、それに尽きると思っている。今日は、「行けるところまで行く、最後まで行く」という気持ちで臨んだ。
最初は、けっこう前のほうの位置で、大迫さん(傑、Nike,マラソン日本記録保持者)について走っていたが、その段階で、脚の重さを感じていため、想定から変えざるを得ない状況になってしまった。
そのなかで、ぎりぎりのところで耐えて、「ここで離れたらダメ」「(前を)捕らえるんだ」という気持ちで走った。
少人数になってからも「1番じゃないと意味がないんだ」と自分に言い聞かせて、なんとか粘った。
結果的には負けてしまったが、粘りは出せたと思う。
日本人の長距離といえばマラソンだけでしたが、今では世界と戦えるメンバーが次々と現れ日本記録を更新していくという、すごい時代になりましたね。
今回おしくも参加標準記録を上回れなかった田村和希選手ですが、タイムは日本記録更新という誇っていい成績なので、悔しさをバネにしつつ胸を張ってこれからも活躍していってほしいですね!
田村和希といえば箱根駅伝!下田裕太との思い出のタスキリレー!吉田圭太との戦いも!
田村和希選手といえば2017年に行われた、第93回箱根駅伝が印象に残っている人は多いのではないでしょうか。
田村和希選手は青山学院大学の駅伝ランナーとして活躍し、青山学院大学4年連続箱根駅伝優勝の立役者となった1人です。
元々は平坦な道である4区を担当し、1、2年次には区間賞を達成する快走を見せました。
しかし、93回箱根駅伝時には、大会3日前に風邪を引いてしまい、急遽、復路の当日エントリーで7区を担当することになったのです。
箱根駅伝でのアクシデント!
タスキを受け取った田村和希選手は15㎞までは後続との差を広げる走りを見せ、青山学院の3年連続優勝が濃厚か?と思われる状況になりますが、アクシデントに見舞われます。
給水を2度摂取してから突然脱水症状を起こし、本来の走りが出来なくなったのです。
左右に蛇行しながらも必死の思いで残り6kmを先頭のまま走りきり、最後は笑顔で8区の下田裕太選手にタスキを渡しました。
月間青学陸上部に、当時の詳細な状況が記録されています。
苦悶の表情を浮かべ、フラフラになりながら田村和希(3年)がやってきた。
8区で待っていた下田裕太(3年)は、田村和の名前を叫んだ。
田村和は襷(たすき)を下田に渡す時、苦しくて何も伝えることができなかった。
だが、下田が放った言葉はしっかりと聞こえた。
「任せろ!」
下田は襷を受けるとエンジン全開で飛び出していった。
「下田が見えた時はホッとしました。襷を渡す時、『任せろ』って下田が言ってくれたので、安心することができました」
田村和はそこからあまり記憶がない。
体が冷えて痙攣を起こし、点滴が打たれた。
そして、救急車で病院に運ばれた。
「救急車の中は何も考えられなかった。ただ、つらかったです」
「田村は厳しい状態になったけど、粘って襷をつないでくれた。僕はこれまで出雲、全日本と田村に助けられた立場だったんで、田村がダメな時は僕が走る。それがチームだし、駅伝だと思います」
その後タスキを受け取った下田裕太選手は、再び後続との差を広げ区間賞を達成し、青山学院大学の優勝となったのです。
「田村は厳しい状態になったけど、粘って襷をつないでくれた。田村がダメな時は僕が走る。それがチームだし、駅伝だと思います」
とレース後にコメントした下田裕太選手。
いいチームですね。
当時の青山学院大学が4連覇出来たのも、チームメンバーたちの絆が深かったおかげかもしれません。
田村和希VS吉田圭太!
青山学院大学といえば、もう1人。
田村和希選手が4年生時に3学年後輩だった、吉田圭太選手が最近話題に上がっていますね!
吉田圭太選手は田村和希選手と同じく住友電工に所属しており、昨年2020年駅伝で、なんとこの2人が対決します。
2020年度に行われた、天皇盃第25回全国男子駅伝。
両名とも3区として出場し、終盤2人で2位争いを繰り広げ、お互いに笑顔を見せ合うといった微笑ましい場面もありました。
都道府県駅伝 3区
田村和希 と 吉田圭太#都道府県対抗駅伝#都道府県男子駅伝#都道府県駅伝#田村和希#吉田圭太 pic.twitter.com/3GWbibroJs— chencolleen (@chencolleen2003) January 19, 2020
吉田圭太選手は「最後追い抜かれて悔しいと」語っており、チームメンバー同士ですがライバルでもあるみたいですね。
陸上長距離界も、ようやく競いあって高め合える選手が増えてきたのでこれからの成長が楽しみですね!
田村和希のクロカン2021結果は?!注目の兄弟対決!
田村和希選手のクロスカントリー、毎年兄弟で揃って出場し上位を競い合っているので2021年度も注目の対決です。
さて、前年度までは2年連続2、3位を記録した兄、田村和希、弟の田村友佑ですが2021年度はどうだったのでしょうか?
結果からお伝えします。
第104回日本陸上競技選手権大会クロスカントリー競走より
順位
1 三浦 ⿓司 順天堂⼤学 29:10
2 松枝 博輝 富⼠通 29:10
3 今井 篤弥 トヨタ⾃動⾞九州 29:16
4 ⽥村 和希 住友電⼯ 29:17
5 鈴⽊ 塁⼈ SGホールディングスグループ 29:18
6 ⽥村 友佑 ⿊崎播磨 29:20
7 藤本 珠輝 ⽇本体育⼤学 29:21
8 川瀬 翔⽮ 皇學館⼤学 29:24
9 武藤 健太 JR東⽇本 29:24
10 島貫 温太 GMOインターネットグループ 29:27
今年は田村兄弟の1、2位フィニッシュが期待されていましたが、田村和希は4位、田村祐介は6位という、いまひとつの結果になってしまいました。
田村和希選手も、ツイッター上でコメントしています。
入社から、はや3年が経ちました。一緒に戦ってくださっている方々のためにも、そろそろ結果が欲しい。半端な結果じゃなくて、自分も含めて誰もが満足する最高の結果が。
— 田村和希 / Tamura Kazuki (@tamukazu_ekiden) April 1, 2021
どうしても1位がほしい田村和希選手。
しかし、田村和希選手の目標は、2021年5月3日に行われる、第105回日本選手権男子10000m走です。
この10000mで結果を出す為の練習しかしていないでしょうから、今回のクロスカントリーの結果は仕方ないと思います。
2021年度のクロスカントリーは、4、6位でした。
ですが、来年はオリンピックもなくクロスカントリーの準備ができるでしょうから、2022年度は田村兄弟の1、2フィニッシュに期待しましょう!
田村和希選手、炎の体育会TVに出演!子供たちからも大人気!
田村和希選手が炎の体育会TVについてツイートし、話題となっています。
陸上系マスクマン史上、圧倒的勝利!
やば。(笑)#体育会TV— 田村和希 / Tamura Kazuki (@tamukazu_ekiden) February 20, 2021
陸上界史上、圧倒的勝利!と語っていますが、一体誰のことなのでしょうか?
炎の体育会TVとは、プロ選手がマスクを被り、正体を隠したまま、天才キッズ達や芸能人と勝負する、といった番組です。
2021年2月20日に放送された、炎の体育会TVに登場した、マスクドランナーの正体は、館澤亨次(たてざわりょうじ)選手となります!
800mの勝負で、ハンデ付きの対決でしたが、圧勝だったようですね。
番組として大丈夫だったのか、少し心配です(笑)
一方、田村和希選手も、炎の体育会TVに出演したことがあります!
昨日放送されました炎の体育会TVに田村和希が出演しました。
非常にタフなコースでしたが天才キッズと楽しく勝負することができました。
寒く、花粉が飛ぶ中、天才キッズと家族のみなさま、関係者のみなさま、ありがとうございました。#住友電工陸上競技部 #炎の体育会TV pic.twitter.com/pBXyvBhBcy
— 住友電工陸上競技部 (@sei_trackfield) March 17, 2019
かっこいいですね!
当時、田村和希選手は駅伝の専門選手であったことから、勝負内容はトラックではなく坂道のコースを走るという内容になってます。
結果は全て勝ったそうで、先程、箱根駅伝の紹介で登場した、下田裕太選手をからかっった発言で周囲を笑わせたりし、ユーモアのある選手のようです!
いつでも笑顔でチームメイトにも優しい性格を持っているが、時には本気で悔しがり、涙を流す。
そんな田村和希選手の、色々な面を見れたと思います。
第105回日本選手権では、納得の行く結果を出してくれ、と願わずにはいられません。
皆さんも、一緒に応援しましょう!